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手言ゲーム

 恋人が怪我をしたので湿布を貼ってやった。
「こんなにやさしくしてくれるの、いつ以来かしら」
 目が笑っていない笑顔で言う。右手から今の彼女に乗り換えてから、もう随分経つ。もともとページを捲るのは彼女の役割だったのだが、それがマウスをクリックするという動作に変わったのが、最も大きな要因だった。IT化の波がこんなところにも。
 確かに普段から彼女に気を遣わず、自分勝手に酷使しているところはあった。彼女がそうして奉仕してくれるのが、当たり前だと思っていたのだ。
「こんなに激しく動かされるなんて、思ってもいなかったわ」
 付き合い始めた頃、そう零したことがある。今まで肌を合わせていた右手とは違い、その動きはぎこちなく、緩慢だった。そんなの当たり前なのに、幾分かの不満を、僕は感じていたのだった。
「あなた、あたしを自分の一部だとでも思っていたんじゃないの?」
 思っていた。今でも、そう思っている。
「傲慢な男。全部、自分の思い通りになると思ってる」
 悪かったよ。そう言って、患部をやさしく包み込もうとする。
「やめて。昔の女なんて、持ち出さないで」
 どうしろって言うんだ。
「舐めて。やさしく」
 彼女が意地悪な感じになった。湿布の臭いがするからイヤだ、と言おうとしたが、言ったが最後、収拾がつかなくなるような気がした。
 僕はゆっくりと舌を這わせた。
「そうよ。たまには奉仕する側の気持ちを、味わいなさい」
 湿布と汗の味しかしない、と思ったが、口には出さなかった。
「これからも愛してくれるかい?」
「さあね。当分は、無理じゃないかしら」
「義母と義姉と義妹が順番でお見舞いに来てくれないかなあ」
「どこの仏国書院よ、それ」
 彼女にいつもの笑顔が戻った。これからはちょっぴりやさしくするさ。約束するよ、マイハニー。
 僕も笑顔を返した。
「ねえ。ひだトンネルって、何かエロいと思わない?」
「マンホール的な意味でね」

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  1. 2011/04/26(火) 12:07:26|
  2. 茶林小一
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Author:茶林小一
 バカSFからバカSMまでをモットーに、火星人や大和撫子などの絶滅危惧種を保護するため世界緑化運動を推進しています。応援よろしくお願いします。

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