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妖怪タライ回し

「ここはどこだ」
 何度目かのつぶやきを、俺は漏らした。
 波間を漂っていた。乗っているのは、大振りな丸いタライ。拾った流木を竿にして必死に漕いでいるが、果たして進んでいるのやら、戻っているのやら、皆目見当もつかない。
 確か、乗っていた船が難破したのだったと思う。前後のことは、よく覚えていない。気がついたら、タライの中にいた。まあ、こうして生きているだけでも幸運だと思うべきだろう。
 空を見上げても、星は見えない。気がついてからずっと、こんな天気が続いている。これでは位置も方角も、知りようがない。
「どうしたものかな」
 娯楽も何もないので、ひとりごとばかりが多くなる。何か変化でもないものか、と呑気に考えていた。
 そのときだ。
 突如、海面からたくさんの青白い手が現れた。マドハンドか。いや違う。こいつは噂に聞く、舟幽霊だ。
 俺が女ならここでエロゲー的展開に突入するのかもしれないが、残念ながら、俺は男だ。ならば、ヤツらの狙いは決まっている。
「いなた貸せ」
 来た。バカの一つ覚えのように、こいつらはこればかりだ。いなた、というのは柄杓のこと。柄杓を貸すと、こいつらはそれを使って海水を船の内側に汲み入れ、沈没させるのだ。
 タライの中には、ご都合主義的に一本の柄杓が転がっていた。
 底をぶち抜いて、青い手に握らせる。こうしておけば、ヤツらがタライに水を入れることはできない。青い手が柄杓で海水を掬っては、タライの内側に差し入れるのを、俺は愉快な気持ちで見ていた。
 見ているうちに、笑いがこみ上げていた。俺は、バカどもを指さして笑った。
 竿が俺の手から離れたのを、ヤツらは見逃さなかった。
 舟幽霊は素早く竿を奪い、タライにぶっ刺すと、そのままタライをひっくり返した。

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  1. 2010/09/22(水) 15:09:09|
  2. 茶林小一
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Author:茶林小一
 バカSFからバカSMまでをモットーに、火星人や大和撫子などの絶滅危惧種を保護するため世界緑化運動を推進しています。応援よろしくお願いします。

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