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緑乃帝國 緑のオンライン文芸誌

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無人島の冬 ~ポロリもあるよ~

 カリブ海はメキシコ湾の南側、カリブ諸島に囲まれた大西洋に隣接する水域である。
 古来より海賊の頻発、氾濫する海であることは有名である。それはこの海域が無人島を含む大小さまざまな島々によって構成され、それらの島は隣接するベネズエラ、パナマ、コロンビア、コスタリカといった十を越える国の管轄が入り組み、統一された組織による犯罪者の捕獲・駆逐が困難であることが大きな理由として上げられる。またそのため犯罪者が逃げ込むのに好都合な立地条件でもあった。
 その状況は現在でも変わってはおらず、平成のこの世にもカリブ海は未だ海賊天国であり、カリブ海域で輸送船が拿捕されたり、観光客が捕らえられて身代金を要求されたりといった事件が新聞やニュースを賑わせることがある。変わったのはその昔彼らが手にしていたのがシミタールやカットラスであったのが、今ではウージやカラシニコフである点であろう。
 だから覚悟はしておくべきだったのだ。こういうこともあるのではないか、と。
 人一人いない島の頂きで、澄みきった青緑の空に向かって、叫んだ。
「巨乳なんて、キライだーーーーー!」

 ザムザぐれ子はカリブ海域では有名な海賊だった。朝起きたら乳がアザラシになっていたと豪語するほどの巨乳の持ち主で、界隈では『カリブのパイオツ』、または『パイオーツオブカリビアン』の二つ名で知られている。性格は粗暴かつ残虐で、その昔彼女の胸をただ脂肪の塊呼ばわりした暗殺拳伝承者は、今まで自らが手をかけた者たちと同じような状態で最期を遂げた。
 そのぐれ子に俺が目をつけられてしまったのは、俺が巨乳に目がなく、眼前に頂を誇張する山々があればそれを揉みしだかずにはいられない性格だったからだ。だから、俺の乗っていた舟が拿捕され、ぐれ子の前で一列に並ばされ、世に二つとないそれが目の前を通った瞬間つい手を伸ばしてしまったとしてもこれはもう仕方がないことだろう。何と言っても彼女はデニムのホットパンツの上に黒いタンクトップ一枚、もちろんノーブラだったのだから。
 彼女が凍り付いた表情で機関銃を取り上げるのを見て、俺は腕を押さえていたジョニーデップ激似の海賊を振り切り、海に飛び込み、泳ぎ、この無人島へ、逃げ着いたんだ。
 まさか追ってくるなんて、思ってもいなかったんだ。
「ケツにキスしな、ファッキンジャップ」
 お上品に翻訳してだいたいそういった意味合いのスラングを叫びながら、機関銃を乱射する。俺は岩や椰子の木を盾にしながら、這々の体で逃げ回る。
「何でそんなに怒るんだ。君の持ち物が素晴らしいから、その、ちょっと手が伸びてしまっただけじゃないか!」
「黙れ変態大国ファッキンジャップ。その手の指を全部切り取ってミキサーに突っ込んでやる」
「照れることはない。世界に誇れるそれを、君は胸を張って見せつけるべきだ」
「お前らセクハラ男は知らないだろうが、Dカップ以上の女性の三分の二が自身の胸にコンプレックスを抱いている。そちらの職業に就いたものなら利用のしようもあるが、それ以外では必要以上に大きいことは無用の長物。そう思っているのを知らないのかこの腐れマラ」
 確かにむやみやたらに触られたり視線が集中したりすることは気分のいいことじゃないかもしれないなあ、と自らの行いを棚に上げて思う。
 しかしながら、これくらいのお触りで命まで狙われることはないじゃないか、と思うのは男の勝手な判断だろうか。そうかもしれない。
「だが、壁おんなと山おんななら山おんなを選ぶのが男というもので、そう考えれば大きい方が得というものじゃないか」
「そういうバカ男が多いからムカつくんだ。結局小さくても大きすぎても女にとってはコンプレックスになるんだ。貴様らバカ男のせいでな!」
 話が八つ当たりっぽくなってきた。八つ当たりで殺されてはたまらない。
 銃弾の雨を避け、雑草を掻き分けながら上へ上へと走る。途中ペンギンの群れとすれ違った。種類はわからなかったが、何であれカリブ海にはペンギンはいなかったはずだ。奇妙に思ったが今はそれどころではない。7.62ミリ弾が絶え間なく降り注いでくる。何頭かのペンギンが流れ弾を食って四散する。立ち止まれば、俺もああなる。ファッキンジャップくらいわかるよバカヤロウ。
 このまま逃げては追いつめられる。島の裏側に逃げなければ。
 逃走コースを横に変えた。そのときだ。
 ぽろり。
 と、足下の地面がこぼれ落ちた。
 いつもそうだ。ポロリもあるよ。その一言に、騙されるんだ。
 そう思いながら、落下した。
 落下した先は柔らかかった。
「何だい。人の胸の上に落ちてくるなんて、失礼な男だね」
 女の声に慌てて立ち上がると、そこにはこれまた豊かな胸部を持つ女性が、いた。
「あたしはアンジェリーナ。トレジャーハンターだ」
 トゥームレイダーの評価すべきところはそのゲーム内容ではなく、ホットパンツ姿の巨乳美女というトレジャーハンターのイメージを定着させたところだと思う。個人的に思う。
「ここは確か無人島だと思ったんだが……あんたここの住民かい?」
「そうだ。そしてこの島では互いの胸に触れ合うのが挨拶となっている」
 上から文字通り銃弾が降ってきた。
「もう新しい女に手を出したのかい、セクハラジャップ」
 これから出すところだ、と答えたかったが油を注ぐだけなのでやめておいた。
「何だいあの女は」
「凶暴な海賊だ。早くここから逃げるんだ」
「そうはいかない。この島にペンギンがいる秘密を見つけださなければ」
 それに、と言いながら引き締まった腰から得物を引き抜いた。こちらは二丁拳銃だ。
「あたしは自分より胸の大きな女は嫌いなんだ」
 たちまち銃撃戦が始まった。俺にできるのは、もちろん逃げることだけだ。
 落ちたところは天然の洞窟だと思っていた。だが、奥へ進めば進むほど。周囲の岩壁は明らかに機械的に切り出された形状に変わり、奇怪な文様が散見されるようになった。
 なるほど。アンジェリーナはこの遺跡を調査していたのだ。
 岩壁が狭まってくる。このままいけば行き止まりになるかもしれない。しかし、引き返せば待っているのは死だ。進むしかない。
 三分ほど走った。両壁は身体の幅くらいまで狭くなっていた。ここまでか。そう思ったとき。
 道が開けた。
 広場だった。床から壁面、そして七メートルほどの高さの天井までもが、水晶と思われる鉱物に包まれ、天井の隙間から射す陽光を受けて輝いている。
 そしてその中央に、盛り上がった高台があった。
 吸い寄せられるがごとく高台に近付く。水晶を削りだしたような、大きなレバーのようなものがそこにはあった。
「見つけたぜ、エロジャップ」
 後ろから声がした。振り向くと、そこにいたのは予想どおりぐれ子だった。アンジェリーナも一緒にいる。
「彼女から話は聞いたわ。確かにあなたは女の敵だ」
 三つの銃口が俺に向けられた。どうやら意気投合してしまったらしい。この遺跡は、俺にとっては絶体絶命都市であったようだ。
「しつこいオトコは嫌われる。いい加減くたばりな」
 ままよ。俺は高台にすがりついた。そしてレバーを、動かした。
 お約束のように轟音が響く。そして島全体が激しく揺れはじめた。
「何だ、これは」
「乳が……反応している……」
 島がその身体を揺さぶる。大地を揺さぶる。ぐれ子とアンジェリーナの胸も揺れる。
 そして島の表皮が。剥がれ落ちるように。草と土と岩の下から。純白の氷壁が迫り出し、貫き、翼を広げ。
「これはいったい……」
 地球の気候は周期で変化するといわれる。今熱帯である場所が、千年後にも熱帯であるとは限らない。
 そのようなときに、もしも気候を自在に調整できる機構があれば。そのようなことを、古代の人間も考えたのかもしれない。
 その昔。ある地方でロケットの打ち上げがあった。火星へ第一期の住民を送る、テラフォーミングの一環である巨大船団ロケットだった。
 打ち上げられたのは冬だった。多くの人々に見送られ、打ち上げられたロケットは、その際に放射した熱で、一帯に一時的な夏をもたらした。それはロケットの夏、と呼ばれた。
 土壁とともに海に落ちたペンギンたちが気持ちよさそうに回遊する。ぐれ子とアンジェリーナも青白い光に包まれ、海へと運ばれていった。アザラシのような胸は、本当のアザラシへと変わってしまったのかもしれなかった。
 突如発生した氷の島は、カリブに初めての冬をもたらした。
 俺は一人、島の頂上に立っていた。そこは今、まさに世界の中心であるように思えた。
 助けが来る可能性は、なかった。俺は叫んだ。


 デジタル社会塵投稿作品です。
 http://www.ononet.ne.jp/takao/%83f%83W%83%5E%83%8B%8E%D0%89%EF%90o.htm
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  1. 2007/07/10(火) 23:54:22|
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Author:茶林小一
 バカSFからバカSMまでをモットーに、火星人や大和撫子などの絶滅危惧種を保護するため世界緑化運動を推進しています。応援よろしくお願いします。

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