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オンライン文化祭2011―夜―書評 その4

ゆずり葉の系譜 / koharuさん
 とある武家の姫が主人公の架空歴史小説。姫は武家に仕える<影>のひとりと淡い思いを交わしつつ、成長し、武家社会の荒波に揉まれていく。
 オンライン文化祭ではいわゆるロマンス小説が多数を占めていたので、最初はこの作品もそういう類のものかと思い読み始めていました。確かに序盤はそういった雰囲気を漂わせ、パターンに添った話運びが展開されていきます。だが、中盤辺りから、物語はまったく違う表情を見せはじめる。
 物語を綴る際、どうしてこの世界なのか、どうしてこの設定なのか、ということには、例え僅かであっても「理由」が必要です。そしてその理由は、少なからず読者に伝わらなくてはならない。作者の側が「これは理由があるんだ」と思っていたとしても、読んでいる側がわからなければ、納得できなければ、物語への没入を損なってしまう。
 本作品は、武家社会を舞台とすることで、武家社会の思想、ものの考え方を描くことに挑戦しています。そして私個人としては、それは上手く、表現豊かに表現されていると思う。今を生きる我々とは違う姫と、それを取り巻く人々の考え方。それらが絶妙な距離感で違和感なく語られています。
 距離感が絶妙というのは、つまりそこに表れているものが、現実にある我々と対比できるということでもあり、延長線上にあるということでもある。作者はそのことをしっかり理解し、現代の私たちに繋がるように、届くようにと物語を紡いでいく。何より私が評価するのは、ここがしっかりと書かれているためだ。
 歴史物だということだけで敬遠される方は多いと思うが、食わず嫌いせずぜひ一度読んでみてもらいたいと思う。現代へ生きるあなたにも、きっと届く物語だと思うからだ。

おいしい夜食の作り方 / 楽遊さん
 16歳でデビューした小説家佐利絵里(さりえり)は担当編集から、連載エッセーのお題に「得意料理」を提示され、頭を抱えていた。なぜなら彼女は、そもそも料理自体が得意ではなかったからだ。そんな彼女が採った手段とは……。
 本作はひとつの作品でありながら、多様な顔を見せている。冒頭、無茶な課題に頭を抱える主人公からお話ははじまるが、そこからひとり語りによる半生記が綴られていく。そして後半、新たな登場人物が加わるのだが……。
 ともかく次に話がどう飛ぶのかがまったく予想できない展開になっている。ひとつの作品ではあるが、本作には幾つもの物語を寄り合わせ、一本に仕上げたような楽しさがある。それらの表出の仕方、緩急の付け方が絶妙なので、個人的にジェットコースターノベルと名付けることにした。
 そのぶっ飛び展開を支えているのが、一つ一つの細やかな描写や、そこに秘められたふんだんなウィットでもある。物語を楽しむのはもちろんだが、何よりも文章そのものを、「読むこと」を楽しんで欲しい。そんな一品です。

ハロー・バイバイ / あるるかんさん
 血が繋がっているわけでも何でもないけれど、やたらと顔が似ている大学生の僕と、何をやって暮らしているかわからない近衛。そんな二人の邂逅を描く物語。
 境目をつけられない人というのはいる。だいたいにおいて我々は少なからず周囲のことを自分のわかることに定義し、当てはめ、これはこういうものなんだ、と固定化していくことで、安心してこの世界を生き、道程へ踏み出していくことができる。
 だがときに、そうやって境目をつくること、固定化すること自体を、苦手とするもの、苦痛と感じるもの、そして、それ自体を思考しないものがいる。
 乱暴に定義してしまうならば、これはそういうものたちの物語だ。
 彼らは線引きができないことで、ただ生きているというだけで多大な苦痛を強いられる。だからその苦痛を和らげるために、自分なりの習慣をつくり、それを武器として生き抜いていこうと試みる。それは決まり切った挨拶の「ハロー」であったり、「バイバイ」であったりする。
 彼らのつくり上げる世界は脆く、不安定だ。ちょっとした外部からの刺激や変化で、それは容易に崩壊する。これは、そんな未来を綴った物語でもある。
 本作にどれほど作者自身が投影されているのかはわからないが、私はこの作品からは、言い知れようがない叫びを感じた。そしてそれはやはり、「そういうものたち」の叫びであるように聞こえる。
 正直、この作品は紹介しようかどうかかなり迷った。けれどもこの叫びが、できるだけ多くの人に届けばいい、とも思った。どれだけの人がラストまで読み切ってくれるかはわからない。だが、読んで欲しいと思う。
 この作者さんは一年前のオンライン文化祭にもサウンド×ノイズという作品を投稿されている。こちらも同じテーマを扱った作品であるように思えるので、併せて読んでもらえれば、と思う。

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  1. 2013/03/29(金) 00:00:00|
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Author:茶林小一
 バカSFからバカSMまでをモットーに、火星人や大和撫子などの絶滅危惧種を保護するため世界緑化運動を推進しています。応援よろしくお願いします。

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