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オンライン文化祭2011―夜―書評 その2

ロード・オブ・ヘブン / 吉田和代さん
 吉田さんお得意?のミリタリーもの。ロード・オブ・ヘブンと呼ばれる激戦地に送られることになった新兵と、そこに所属する男たちの物語です。
 前回のオンライン文化祭ではかなり攻撃的な作品を出品された吉田さんでしたが、今回は全体に好きなものを書いて出したぜ! というエネルギーに満ちていて、ノリ、安心感、安定感という面では抜群でした。個人的には昨年のようなのもオンライン小説ならではという好ましいものです。
 ミリタリーものはもちろん、戦争や組織闘争を扱う作品で大事なのは、「運用」を描くことではないかと思ったりなんかします。
 本作で描かれているのは小規模な戦闘なのですが、その中でも様々な「運用」が描かれています。どうして新兵が派遣されるのか、その背景に何があるか、どういう思惑があるか、どうしてこういう武装なのか、その武装をどのように使うか。ただ武器を持たせ、ただ使わせるのでなく、そこの一つ一つに意味を持たせることで、いわゆるリアリティというものが表出してきて、読んでいる方に「ああ、なるほど」と納得を促すのだと思う。
 ここで大事なのは、欲しいのは「リアリティ」であって、「リアル」ではないということでしょうか。納得できる理由、ラインといってもいい。それが一本通っていることで、余計な引っかかりを感じることなく物語に没入できるようになります。本作は、そこがしっかりできていた。神は細部に宿るというのは、おそらくこういうことも含んでいるんじゃないかと思います。
 もう一つ、本作品はあまりミリタリーに興味がない方でも、できうる限り読みやすいように心を尽くされているように感じました。自分のウェブサイトに公開するか、こういうイベントに出品するかで違った心配りをしなければいけないはおそらくこういった点で、参加者の人はもちろん、読者の方にもそういった点を読みとってもらえればいい、伝わればいいと思います。
 面白かった。

Talkative Seawall / 楠園冬樺さん
 何とも不思議な雰囲気と魅力のある作品です。今回個人的に「ひとりすばる文学賞」をコンセプトに掲げて参加したのでありますが、こっちのほうがすばるかもしれない。
 堤防のひとり語りという秀逸な設定で、堤防が目にした様々なあれこれをやさしげな語り口調で紡いでいきます。印象的には児童文学風にしてあるのですが、内容はなかなかに重量感どっしりです。堤防だけにな!
 この作品にはメッセージがある。それは、テーマといったものよりはもっと直接的なものです。直接、衒わず、婉曲にせず、まっすぐ読者に届けるものです。私は檄とよく表現します。  届けたいものがあって、それを届けるために書く。これだけでその作品は素晴らしいものであり、価値あるものだと、私は考えます。丁寧に、持てる力を尽くして、読者に投げ掛けているのが伝わります。
 しかし。だが。それでも。
 小説、物語、ストーリーであるからこそ、ここで「どう伝えるか」というのは、大切になってくる。
 物語の中盤以降。メッセージの一番肝となる場所。この部分で私はメッセージが定型化していると感じました。この考察を書くために私はこの作品を三度読みましたが、やはりその印象は変わりません。
 定型化しているというのは、どういうことか。それは、作者が伝えたいメッセージがあって、それを表出させているんだけれど、それをおそらく作者自身の中で、充分に消化し、落とし込んで自分の思想の一つにまで昇華させられていないこと。もうひとつは、これは書くのが大変危険なのだけれど、作者自体が色々な外部思想(学校教育・道徳・常識・倫理・法律といったような)の、いわゆる一種の洗脳を強く受けた状態で、本人自身もその思想に引きずられていることに気がついていないこと。
 本作品においては、その二つがない交ぜになった状態で、定型化している、イコール多角性・多面性がないという印象が発露していると思われます。
 現在私が読んだ作品の中では他に鹿の子さんの『夜を越えて』、染井六郎さんの『コサライ』も同様のメッセージを届けたいと願う作品であり、また同時に本作品と同様の脆弱性を含んでいると感じます。昨年のオンライン文化祭に出品された吉田和代さんの『その音を聞かせて』も入れてもいいでしょうか。
 誤解なきよう申し上げておきます。伝えたいことがある。届けたいメッセージがある。それを作品にして、届けようと試みる。それだけで、私はもう、全面的に評価します。なぜなら言葉は、文字は、多くの場合そのためのツールであるのだから。真摯に向き合って書いたかどうか。それくらいは読めばわかる。それを読みとる力くらいはあるつもりだ。
 けれども。だからこそ。
 伝わらなかったら、哀しいじゃないか。一人でも多くの人に、伝えたいじゃないか。心にまで、染み通らせたいじゃないか。
 本作の作者さんも含めどの方も、おそらく檄を飛ばす、ということに関してはあまり経験を積んでいないのだと思う。裏を返せば、これから経験を、それはまだ、積み上げられるものだと思う。
 これからも。たまにでもいいから、こういう作品を書き続けて欲しい。そう思います。

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  1. 2013/03/27(水) 00:00:00|
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 バカSFからバカSMまでをモットーに、火星人や大和撫子などの絶滅危惧種を保護するため世界緑化運動を推進しています。応援よろしくお願いします。

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