一生馬鹿にされるままでよかった。地に腹ばいになり、ガンサイトを覗くたびにそう思う。
徴用されてからレーザー手術を受けさせられ、眼鏡は必要でなくなった。代わりに十字に切られた照準が日常の品になった。
射撃が唯一といっていい取り柄だった。が、そんな技巧など遊技場くらいでしか役に立たない。そんな特技で英雄になんてなれるわけもない。そのはずだった。
政府が北の半島を敵として開戦することを、誰も止められなかった。
「……は、帰ってこない」
スコープの先で、階級章のついた軍帽が弾け飛ぶ。ボルトアクション。その音が、堪らないくらい心を乾かせる。
脱皮だったと人は言う。けれども、羽があっても飛べないのなら。
「二度と会えない」
ボルトアクション。
ちやほやされることなんて、まったく大事なことじゃなかったんだ。そんなことより、たった一人の。たったひとりの。
「ずっと、一緒に、暮らさない」
それは心が苦しくて、悲しくて、どうしようもなかったときに唱えた魔法の言葉。奇跡を起こしてくれた魔法の言葉。
ボルトアクション。薬室に新たな死を装填する。
未来は変わってしまった。ぼくの一番のともだちは、もう。
「帰ってこない」
- 2007/05/08(火) 13:27:47|
- ちゃば子Fちゃば雄
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