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緑乃帝國 緑のオンライン文芸誌

世界の緑化を推進するウェブログ形態のオンライン文芸誌

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ゾンビ祭り2011書評

風香の行進 / 白縫いさやさん
 風香と名付けられたゾンビの娘が、ひたすらヨーロッパを歩き、横断するお話。物語はその風香の後を追いかける者たちによって語られる。
 ただ無目的に、ひたすら歩みを続けるゾンビの風香。その行動から、後を追う者たちは、己たちでその行動の意味を考え、解釈し、考察し、定義していく。その思考が延々と演説調で語られていく。言ってみれば、そんな物語である。
 その形態から、読む側も様々な解釈や、思想の仮託を容易に行えてしまう物語でもある。作者が何をどこまで意図し、これを紡ぎあげたかは定かではないが、常にない読書体験ができるであろうことは間違いない。ぜひ読んでいただきたい。

腐食 [I Need You, I Feed You] / 卯月音由杞さん
 二人でレストランを開こうという前夜、ユリとトウマはドライブに出た。それは新しい何かをはじめるときの、二人の習慣のようなものだった。だが、車を停めダム湖を眺めていた二人の前にゾンビが現れ、トウマは殺害、感染してしまう。だがユリは、ゾンビと化したトウマと生きる決心を固めた。
 私はどちらかといえば作者のセンスや価値観を読む読み手で、例えば凝った構成や技巧をあまり重視する傾向にはありません。だが、それでも魅せられる構成の妙、文章のきらめきというものはある。
 この作品には、そういった妙手やきらめきが詰まっている。プロローグから小出しにされていくエピソードは緩やかに、緩やかに破滅と崩壊へと向かっていく。そしてその幕間に挿入されるカットバック。在りし日の思い出。未来への渇望。それらはすべて現実と対比を成し、積み上げられていく。
 そして、崩壊がはじまる。見事という他はない。
 もちろんそれだけであれば、あえて紹介しようとは思わない。その根底には、大きなやさしさが土台としてある。
 作品はまさに破滅と崩壊を描いた世界だ。だが、そこに描写される情景や細部、二人のやり取りには「そうでないもの」が溢れている。そういったものが溢れていても、ままならないこともある。そう、吐露されているような気持ちになる。
 だから、この崩壊の物語を読み終えたあとでも、私の心には、なぜか暖かいものが残っていて、それがゾンビ祭りが終わった今でも続いている。
 ここには色々な要素が詰まっている。ぜひ読んでみて欲しい。

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  1. 2013/03/30(土) 00:00:00|
  2. 緑の読書録
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オンライン文化祭2011―夜―書評 その4

ゆずり葉の系譜 / koharuさん
 とある武家の姫が主人公の架空歴史小説。姫は武家に仕える<影>のひとりと淡い思いを交わしつつ、成長し、武家社会の荒波に揉まれていく。
 オンライン文化祭ではいわゆるロマンス小説が多数を占めていたので、最初はこの作品もそういう類のものかと思い読み始めていました。確かに序盤はそういった雰囲気を漂わせ、パターンに添った話運びが展開されていきます。だが、中盤辺りから、物語はまったく違う表情を見せはじめる。
 物語を綴る際、どうしてこの世界なのか、どうしてこの設定なのか、ということには、例え僅かであっても「理由」が必要です。そしてその理由は、少なからず読者に伝わらなくてはならない。作者の側が「これは理由があるんだ」と思っていたとしても、読んでいる側がわからなければ、納得できなければ、物語への没入を損なってしまう。
 本作品は、武家社会を舞台とすることで、武家社会の思想、ものの考え方を描くことに挑戦しています。そして私個人としては、それは上手く、表現豊かに表現されていると思う。今を生きる我々とは違う姫と、それを取り巻く人々の考え方。それらが絶妙な距離感で違和感なく語られています。
 距離感が絶妙というのは、つまりそこに表れているものが、現実にある我々と対比できるということでもあり、延長線上にあるということでもある。作者はそのことをしっかり理解し、現代の私たちに繋がるように、届くようにと物語を紡いでいく。何より私が評価するのは、ここがしっかりと書かれているためだ。
 歴史物だということだけで敬遠される方は多いと思うが、食わず嫌いせずぜひ一度読んでみてもらいたいと思う。現代へ生きるあなたにも、きっと届く物語だと思うからだ。

おいしい夜食の作り方 / 楽遊さん
 16歳でデビューした小説家佐利絵里(さりえり)は担当編集から、連載エッセーのお題に「得意料理」を提示され、頭を抱えていた。なぜなら彼女は、そもそも料理自体が得意ではなかったからだ。そんな彼女が採った手段とは……。
 本作はひとつの作品でありながら、多様な顔を見せている。冒頭、無茶な課題に頭を抱える主人公からお話ははじまるが、そこからひとり語りによる半生記が綴られていく。そして後半、新たな登場人物が加わるのだが……。
 ともかく次に話がどう飛ぶのかがまったく予想できない展開になっている。ひとつの作品ではあるが、本作には幾つもの物語を寄り合わせ、一本に仕上げたような楽しさがある。それらの表出の仕方、緩急の付け方が絶妙なので、個人的にジェットコースターノベルと名付けることにした。
 そのぶっ飛び展開を支えているのが、一つ一つの細やかな描写や、そこに秘められたふんだんなウィットでもある。物語を楽しむのはもちろんだが、何よりも文章そのものを、「読むこと」を楽しんで欲しい。そんな一品です。

ハロー・バイバイ / あるるかんさん
 血が繋がっているわけでも何でもないけれど、やたらと顔が似ている大学生の僕と、何をやって暮らしているかわからない近衛。そんな二人の邂逅を描く物語。
 境目をつけられない人というのはいる。だいたいにおいて我々は少なからず周囲のことを自分のわかることに定義し、当てはめ、これはこういうものなんだ、と固定化していくことで、安心してこの世界を生き、道程へ踏み出していくことができる。
 だがときに、そうやって境目をつくること、固定化すること自体を、苦手とするもの、苦痛と感じるもの、そして、それ自体を思考しないものがいる。
 乱暴に定義してしまうならば、これはそういうものたちの物語だ。
 彼らは線引きができないことで、ただ生きているというだけで多大な苦痛を強いられる。だからその苦痛を和らげるために、自分なりの習慣をつくり、それを武器として生き抜いていこうと試みる。それは決まり切った挨拶の「ハロー」であったり、「バイバイ」であったりする。
 彼らのつくり上げる世界は脆く、不安定だ。ちょっとした外部からの刺激や変化で、それは容易に崩壊する。これは、そんな未来を綴った物語でもある。
 本作にどれほど作者自身が投影されているのかはわからないが、私はこの作品からは、言い知れようがない叫びを感じた。そしてそれはやはり、「そういうものたち」の叫びであるように聞こえる。
 正直、この作品は紹介しようかどうかかなり迷った。けれどもこの叫びが、できるだけ多くの人に届けばいい、とも思った。どれだけの人がラストまで読み切ってくれるかはわからない。だが、読んで欲しいと思う。
 この作者さんは一年前のオンライン文化祭にもサウンド×ノイズという作品を投稿されている。こちらも同じテーマを扱った作品であるように思えるので、併せて読んでもらえれば、と思う。

  1. 2013/03/29(金) 00:00:00|
  2. 緑の読書録
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オンライン文化祭2011―夜―書評 その3

〈ローズ〉の末裔 / suzu3neさん
 おそらくオンライン文化祭作品中最長の作品ではないかと思います。
 suzu3neさんは前回参加された『ハーメルンの黄昏』も長大な作品でした。まずこれだけの分量を書かれるのがすごいなあ、と、いつも短めな私個人としては感心することしきりです。
 もちろんただ長いだけではなく、その中に重厚なテーマ、精密な設定、登場人物たちの複雑な思考経路を詰め込んでいて、分量に相応しい内容になっています。前回の『ハーメルンの黄昏』は文化祭参加作品中の個人的ベストに挙げさせていただいたのですが、本作も私個人としては現在のところでかなり上位に位置しているので、まずは皆さん腰を落ち着けて読んでいただきたいと思っています。
 さてその上で。私は今回この長さをどうにかできないかとツッコンでみました。
 というのも実は、『ハーメルンの黄昏』と本作を読んで、suzu3neさんには一つ弱点があるのではないか、と思ったからです。それは「情報(設定)をすべて開示しないと落ち着けない」ということ。情報の優先順位、取捨選択が不充分なのではないか、と感じたのです。
 suzu3neさんの作品を読んでいて思うのが、とにかく情報を追っていくのが大変だ、ということです。特に中盤以降、話が転がりはじめる前段階当たりで、この傾向が強い。とにかく次から次へと「知っておかなければならないこと」が出てきて、それに対する登場人物の「考察」が加わる。そしてこの「考察」が、例えば何段階かの論法を経て結論へたどり着くものだったりします。
 これはもちろん読む側にも負担を強いてしまうものではあるのですが、それ以上に何よりも作者であるsuzu3neさんの「これを書いておかないと」「この情報を先に出しておかないと」という焦りや強迫観念を感じてしまう。もちろんそれらは大抵大事なもので、大抵は書いておかなければならないものなのですが、そこにおそらく受け手側のキャパシティというものが考慮されていないように感じる。これは『案君・潔秘(あんくん・きよひめ)』を読んだときにも顕著に感じました。
 suzu3neさんなら許していただけると信じて、もう一歩踏み込みます。原因はおそらく、読者との距離感が上手く取れていない、読者の思考力・想像力の水準をかなり下方に置いて執筆されているからではないかと思う。
 読者の水準をどこに置くかというのは、とても難しい問題です。suzu3neさんの執筆姿勢は、親切だと思う。けれども、手取り足取りすべて教えて、決まったレールの上を歩ませるのがやさしい人間であるとは限らない。子ども扱いするな。そう叫びたい読者も、いるかもしれない。私のことだ。
 言わせていただけるなら。suzu3neさんはもっと読者を信用していい。人間を信用していい。
 そして前々回の考察にも繋がりますが、一部の情報に関しては「ここは全員がわからなくてもいい」とぶん投げる部分も「suzu3neさんの作劇」においては、必要な部分もあるのではないかと思います。
 たぶん、小説の技術的なこととか、そういうことではなくて、私はすごく抽象的な、精神的なことを書いているのだと思う。でも私は、読者を信じたsuzu3neさんの作品というものを、いつか読んでみたい。そう思う。

惣暗(つつくら) / BUTAPENNさん
 牢に閉じこめられた元王女のヒヨとそこで出会った惣暗と名乗る者との、邂逅の物語。
 そしてまた、重層的な成長の物語であるともいえます。王女として我が儘に育っていたヒヨが、惣暗と出会い、反発しながらも様々なことを知っていく中で、人でなしから人へ、有象無象から支配者たる者へ、そして少女から女へと変貌を遂げていく。それらが重なり合うように織り込まれ、紡がれていきます。
 ラストの場面。成長し、檻から出たあとのヒヨの言動が圧巻。爽やかな感動の残る作品でした。

  1. 2013/03/28(木) 00:00:00|
  2. 緑の読書録
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茶林小一

Author:茶林小一
 バカSFからバカSMまでをモットーに、火星人や大和撫子などの絶滅危惧種を保護するため世界緑化運動を推進しています。応援よろしくお願いします。

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