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咲き誇れ、ワイルドフラワー

「お前を嫁に貰いたい。さもなければ、この村を潰すぞ」
 小さな山ほどもある大蛸が、女に言った。
 慣れ親しんだ砂浜だった。その沖から、大蛸はやって来たのだ。お前をずっと見ていた。大蛸はそうも言った。
 女は咥えていた煙草を吐き捨てた。
「ケツにキスしな、マザファッカー。冗談はツラだけにしときな。海に帰りやがれ、変態触手野郎」
 怒った大蛸は暴れ回り、女とその両親が住む小屋を叩き潰して、海中に戻っていった。
「ちくしょうめ」
 廃墟の中、泥だらけの顔に涙の筋を這わせて、女は海を睨みつけた。盛り上がったXカップの胸元に、水滴が落ちる。この熱さを忘れない。女は誓った。
 翌日、大蛸が再び姿を現した。女は背筋を伸ばし、しっかと見上げて、対峙していた。
「決心はついたか、女」
 女は小さく頷いた。
「条件がある。アタシの手は二本。穴は上下で三つ。併せても、一度に五本しか愛せねえ。八本は、無理だ」
「谷間と脚も使えばよいではないか」
「ヤれというならヤるが、長くは保たねえ。それでもいいか」
 大蛸は思案した。
「どうすればいい」
「足を、二本まで減らしてくれ。それに、準備の時間も欲しい。一日に一本、アンタの足を切り落とす。六日で六本。それが済んだら、存分にアンタを愛してやる。どうだい」
「よかろう」
 大蛸はその案を呑んだ。
 女は一日に一本ずつ、足を切りに砂浜に向かった。女が足を切断している間、大蛸はあれやこれやと悪戯を仕掛けたが、すべて成すがままにさせた。文句一つ、吐かなかった。
 六日が過ぎた。
「娘よ、無茶だ。やめなさい。せっかくここまで、我慢したんじゃないか」
 跡地に立てた掘立て小屋の中で、父母が女に縋り付いていた。
 女はそんな父母を見下ろしていた。
 不意に笑みを浮かべ、しゃがみ込んで、両親の肩に手を回した。
「我慢した。だが、すべては、この日のためさ。大丈夫。必ず、帰ってくる」
 立ち上がった。
 漆黒のスリップドレスを身に纏う。太股のホルスターにデザートイーグルを落とし込み、釘バットを肩に抱えた。
 高い金属音。石擦りの音と共に、咥えた煙草に火が灯る。
「行ってくる」
 父母に背を向けた。振り返らなかった。
 八本足相手では、勝ち目がない。だが、ヤツに二本しか足がなければ。
 勝算はある。そう思った。
 空は晴れ渡っている。決戦には、いい日和だ。
 目を閉じた。一つ、呼吸をした。
 砂浜へ向けて、歩き始めた。
 荒地に咲いた一輪の花だけが、女を見送っている。

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  1. 2011/01/18(火) 19:00:14|
  2. 茶林小一
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茶林小一

Author:茶林小一
 バカSFからバカSMまでをモットーに、火星人や大和撫子などの絶滅危惧種を保護するため世界緑化運動を推進しています。応援よろしくお願いします。

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