FC2ブログ

緑乃帝國 緑のオンライン文芸誌

世界の緑化を推進するウェブログ形態のオンライン文芸誌

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

切り裂きジャッキィ

 今度こそ追いつめた、と思った。
 日の当たらない、狭い袋小路である。高い壁を背にして、ヤツは立っている。逃げ場はない。
 周囲には何もない。これも重要だった。ヤツを追い込むことを見越して綺麗に掃除しておいたのだ。
 小道具を用いたヤツのアクションには定評がある。道々に転がる棒きれや樽、店先の鍋や果物、テーブルなど、そこに何かがあればヤツはそれを利用し、飛び、跨ぎ、武器にして見事に逃げ去ってしまう。それは芸術的であるとさえ言えた。顔だけでいえばユン・ピョウの方が人気が出たろう。だがヤツは肉体で魅せたのだ。
 個人的に惹きつけられるものがあるのは否定しない。だがヤツは犯罪者なのだ。何としてでも捕らえねばならない。それに私はサモ・ハン・キンポー派だった。燃えよデブゴン。
 号令を掛ける。捕り手たちが一斉に飛びかかる。ヤツは手にした青龍刀で応戦するが、多勢に無勢だ。最早逃げる術はない。
 そう、思っていた。
 ヤツの身体が宙を舞った。人としてあり得ない跳躍力だった。隣の家の屋根へ音もなく着地した。
「ワイヤーアクションは、使わないはずじゃなかったのか!」
 私は叫んだ。心からの叫びだった。
 それだけは。それだけは、して欲しくなかった。他の誰が使おうとも。ヤツにだけは、使って欲しくなかった。
 信じていたのだ。ヤツの芸術的なまでのアクションがいつまでも見られる、と。私は勝手に、信じていたのだ。
 寄る年波には勝てなくてね。そう答えるとヤツは、高笑いを残して屋根の向こうへ消えていった。

スポンサーサイト
  1. 2009/06/30(火) 17:04:28|
  2. 茶林小一
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

編集人

茶林小一

Author:茶林小一
 バカSFからバカSMまでをモットーに、火星人や大和撫子などの絶滅危惧種を保護するため世界緑化運動を推進しています。応援よろしくお願いします。

最近の作品

作者一覧

最近のコメント

最近のトラックバック

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する