緑乃帝國 緑のオンライン文芸誌

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スクリーンヒーロー

 隙間から差し入れられたのは、七インチくらいの小さな液晶画面だった。
 ヘルメットを被った、煤だらけの顔が淡い光の中に映る。がんばってください。もう少しですから。耳障りな轟音の中で微かに、上の方から声が聞こえる。声に合わせて、画面の中の口が動いた。
 熱さで意識が遠くなる。身体中が汗で湿っているのに、口腔内は渇ききっている。水が、水が欲しい。
 騒音は止まない。積み重なった瓦礫を取り除いているのだ。崩れないように。慎重に。大きいのは音ばかりで、背中に架かる重みは先ほどから変化がない。
 画面の中の顔が替わった。さっきまでと同じ、煤だらけだ。けれども、今度はヘルメットを被っていない。
 がんばって、ママ。
 今度は声は聞こえない。どこか安全なところにいるのだろう。でも、口の動きでわかった。何度も繰り返してくれるから、わかった。
 これでもう少しがんばれる。そう思った。

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  1. 2009/01/27(火) 12:27:18|
  2. 茶林小一
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2009年 年賀小説

 海にいるのだから空にだって牛はいるはずだ。そう言ってあの人は飛び立っていった。
 鷹の羽根を織り上げて、一年がかりで作り上げられたそれは、鳥にも、凧にも似ていなくて、空を飛べるとはとてもじゃないけど思えなかった。
 形じゃない。大事なのは心意気だ。普段はひとの身体の形状をあれこれ言う癖に、こんな時だけ忘れたように、そんな言葉を吐いて大声で笑う。
 必死に引き留めるわたしを抱き寄せて、強く強く力を入れる。それから背中を見せて、あの人は行ってしまう。赤と青と橙と、そして紫に彩られた、茄子のようなそれに縄をかけ、あらん限りの力で引っ張って。
 今頃あの人は最も高い山の頂から、飛び立っているはずだ。無事に飛べたのだろうか。空に近づけたのだろうか。牛は、見つかるのだろうか。
 あの人と別れてからはじめての朝日が昇る。その日の中に、私は小さな小さな、黒い点を見つけた。
  1. 2009/01/01(木) 00:00:00|
  2. 茶林小一
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編集人

茶林小一

Author:茶林小一
 バカSFからバカSMまでをモットーに、火星人や大和撫子などの絶滅危惧種を保護するため世界緑化運動を推進しています。応援よろしくお願いします。

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