緑乃帝國 緑のオンライン文芸誌

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這い回る蝶々

 一生馬鹿にされるままでよかった。地に腹ばいになり、ガンサイトを覗くたびにそう思う。
 徴用されてからレーザー手術を受けさせられ、眼鏡は必要でなくなった。代わりに十字に切られた照準が日常の品になった。
 射撃が唯一といっていい取り柄だった。が、そんな技巧など遊技場くらいでしか役に立たない。そんな特技で英雄になんてなれるわけもない。そのはずだった。
 政府が北の半島を敵として開戦することを、誰も止められなかった。
「……は、帰ってこない」
 スコープの先で、階級章のついた軍帽が弾け飛ぶ。ボルトアクション。その音が、堪らないくらい心を乾かせる。
 脱皮だったと人は言う。けれども、羽があっても飛べないのなら。
「二度と会えない」
 ボルトアクション。
 ちやほやされることなんて、まったく大事なことじゃなかったんだ。そんなことより、たった一人の。たったひとりの。
「ずっと、一緒に、暮らさない」
 それは心が苦しくて、悲しくて、どうしようもなかったときに唱えた魔法の言葉。奇跡を起こしてくれた魔法の言葉。
 ボルトアクション。薬室に新たな死を装填する。
 未来は変わってしまった。ぼくの一番のともだちは、もう。
「帰ってこない」
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  1. 2007/05/08(火) 13:27:47|
  2. ちゃば子Fちゃば雄
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這い回る蝶々

 ハイマワル憲法第九条により、蝶長の飛行は禁じられている。
 蝶長に就任したものは去翅され、飛べない状態で職務に当たることが義務づけられている。だから蝶長は残された六本足で、あちらをウロウロ、こちらをオロオロと動き回ることになる。
 九条のおかげで蝶長同士の争いはなくなったが、地上を行くことで下々の蝶が触れあう機会も多くなり、蝶長自身ではなくその権益に興味を持つ蝶も擦り寄ってくるようになった。
 飛行能力を失った蝶長に移動手段を宛ったり、花蜜や夜蝶を振る舞ったり。その態度はあからさまで、蝶民は皆眉をしかめたが、中にはそんな誘惑に負け、誘蛾灯へと導かれゆく例も少なくなかった。
 各地で九条の撤廃が叫ばれるようになったのは自然の流れだった。が、叫んでいる蝶の九割は蝶長に羽があった頃を知らない世代であった。蝶議会に席を持つ蝶たちも戦争を知らない世代であり、そういった背景もあって九条撤廃の議論が声高になったのであった。
 おしなべてこの世は弱肉強食。それは蝶たちにとっても同様であった。
 辛かったことはすぐに忘れる。美しい姿態が土に汚れ、体液を垂れ流す死骸がアスファルトを埋める。
 そんな未来が近付いている。
  1. 2007/05/08(火) 13:14:28|
  2. 茶林小一
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編集人

茶林小一

Author:茶林小一
 バカSFからバカSMまでをモットーに、火星人や大和撫子などの絶滅危惧種を保護するため世界緑化運動を推進しています。応援よろしくお願いします。

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