緑乃帝國 緑のオンライン文芸誌

世界の緑化を推進するウェブログ形態のオンライン文芸誌

雌犬調教 赤い首輪の牝奴隷

 わたくし、雅(みやび)と申します。
 この名前は、ご主人様がつけてくださりました。
 雅とは上品で艶めかしく、そして美しいという意味だ。だが字を見てごらん。雅、お前がそうだ。美しいが、鋭い牙を持っている。
 わたくしは文盲ですからご主人様のおっしゃることはよくわかりませんでしたが、そんなわたくしにもご主人様は丁寧に教えてくださいました。そして何より、ご主人様がわたくしに名を授けてくださったというその事実が嬉しかったのでございます。
 ご主人様が初めてわたくしにくださったものは、赤い首輪でした。緋と申しますか、明るい色合いの、それは綺麗な真っ赤な首輪でございました。
 首輪には、当然のごとく紐が結わえ付けられております。この紐の端をご主人様がお持ちになり、そうすることで私とご主人様は一つに繋がることになるのでございます。
 首輪一つのみを身につけたわたくしを、ご主人様は表に連れ出しなさいます。厚顔で恥知らずなわたくしではございますが、そんなわたくしでもこのような格好は大層恥ずかしいものです。けれどもわたくしは、ご主人様の牝奴隷。卑しい雌犬でございます。ご主人様に紐牽かれ、静々と付き従うのです。
 恥ずかしさに頬を上気させ、皮膚を桜色に染めるわたくしに、今の君は何時よりも美しいとご主人様は耳元で囁いてくださいます。その一言だけで、わたくしは羞恥を忘れます。すべてから解放され、救われたような心地になるのです。
 緑と白の綯い交ぜになった葉桜が枝が伸ばし、花びらが密やかに舞い散る並木道をご主人様に牽かれ、暫く歩いております。そのようなときわたくしは、必ずといってよいほど尿意を催してしまうのです。まっすぐに伸びた桜の幹。ひっそり景色に溶け込む電信柱。それらを目にする毎にわたくしの生理的欲求は増し、つい脚を摺り合わせてしまうのです。
 そんなわたくしに気付いても、ご主人様は足を止めません。わたくしが、自分から申し出るのを待っているのです。
 わたくしは、散歩が終わるまで耐え忍ぼうと、必死で我慢します。しかしながら、生理現象には敵いません。
 耐えきれずわたくしは、声を上げてご主人様を呼び止めます。するとご主人様は、優しい微笑みを浮かべて振り向くのです。
 ご主人様はわたくしの前にしゃがみ込み、仰います。
 雅。君の一番恥ずかしいところを、見てあげよう。
 お許しを戴いたわたくしは、堪らず黄金色の飛沫を桜の根本に、電信柱に迸らせてしまうのでございます。
 家に帰り着きますと、ご主人様は粗相をしたわたくしにお仕置きをなさいます。雅、君はいけない子だ、端ない子だと、わたくしのお尻を何度も打擲なさいます。あまりの痛さに、わたくしは叫びを上げてしまいます。
 ですが、わたくしを打つその掌から、わたくしはご主人様の愛情をしっかりと感じ取るのです。そして、愛を込めてわたくしを詰ってくださるご主人様の心遣いに、わたくしはつい、喜悦の混じった喘ぎを、雄叫びに隠して静かに吐き出すのでございます。
 ご主人様とわたくしの日々の営みは、概ねこのようなものでございます。
 はじめの頃は、何というところに仕えることになったのだろうと思いも致しました。ですが、わたくしにこういった性癖がもともと備わっていたのでありましょうか。日々過ごすうちには、わたくしの方からご主人様に、行為を求めるようになってしまったのです。わたくしは、端ない奴隷でございます。
 今から思い返しましたならば。ご主人様からこの首輪を戴いたときに、交換にわたくしは、この身をご主人様に差し出したのでございましょう。わたくしとご主人様はきっと、出逢うべくして出逢ったのです。そしてわたくしたちは、このような形でしか、お互いの愛情を確かめあえないのでございます。
 他人様からご覧になれば、何とも奇妙で、滑稽に映ることでございましょう。けれども、これでよいのです。
 なぜなら。わたくしは今、とても幸せなのでございますから。
  1. 2006/06/15(木) 12:53:19|
  2. 団鬼緑
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

編集人

Author:茶林小一
 バカSFからバカSMまでをモットーに、火星人や大和撫子などの絶滅危惧種を保護するため世界緑化運動を推進しています。応援よろしくお願いします。

最近の作品

作者一覧

最近のコメント

最近のトラックバック

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ