緑乃帝國 緑のオンライン文芸誌

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ペンギンフェスタを読もう2012 その3

プラットホーム / BUTAPENN
 すごいものを読んだ。
 主催者でもあるbutapennさんが認知症対応型共同生活介護、グループホームを舞台に描かれた作品です。
 主人公のユルはグループホームで働く新米職員。拙いながらも毎日がんばっているが、幼稚園の先生になる夢をあきらめてこの職に就いたことが心の奥底に澱みわだかまっている。
 そんなユルから見たグループホームの日常を切り取った作品です。
 本作は介護小説であり、職業小説であり、そしてまた青春小説でもあります。介護施設という舞台に様々な縦糸、横糸が絡まり合い、様々なドラマが生まれてゆきます。
 介護施設が舞台のお話なので、当然、介護に関する様々な事柄が作品中には出てきます。私に限らず、ここに書かれていることの半分からそれ以上の事柄は、この情報化社会に生きてる日本人であればおそらく「知っている」事柄であると思います。ですがそれを情報として知っていることと、肌で感じることは違う、ということに、読んでいるうちに気付かされるはず。
 本作には確かに、擬似的にそれを肌で感じさせてくれる熱量と伝えたい気持ちがあった。そう思います。現場にいる人間がどういうことを感じているか。そういった事柄を通して何を考えているか。ひいては「どんな世界をつくってゆきたいと思っているか」をしっかりと提起し、引き出されていたと思います。一面で当事者でもあるbutapennさんがよくぞ書いてくれたものだと思うし、butapennさんだから描けたんだろうと思います。
 ここまでの紹介だと重々しい作品に受け取られがちですが、作者さんの力量ゆえか、その筆致は押しつけがましくなく、軽やかです。敬遠せず、ぜひ読んでみて欲しい作品です。お薦め。

I FISH / tomoya
 すごいものを読んだ。
 tomoyaさんはたまーに読者を試すような作品を出してきて「はははこやつめ」とか思うんだけど、これもそういう系統の作品になると思う。
 とにかく読みにくいというか難解な作品です。たぶん流し読みでは、そこにどんな「お話」が綴られているかさえ、わからなくなってしまうと思う。この作品を読んでいくためには、読者が自身で積極的にパズルのピースを集め、読み説いていかなければならない。一種インタラクティブ的な、ゲームのような趣のある作品であると思います。
 ピースが埋まり、物語の全容が掴めたとき、読者は大きな快感を得ると思う。説明はし難い。万人にお薦めとは言い難い。だがぜひ一度、この作品に触れてみていただきたいと思う。

ペンギン・マター / 迅本 洋
 ネタがかぶってるよ迅本さん!
 ……ええ、そんな個人的ツッコミはさておき、ペンフェスラストに投稿された迅本さんのペンギン・マターです。
 夏休み、父の実家に帰省した緒方夏海と雪丸の姉弟は、付近に落ちた隕石を発見する。卵のような形をした隕石は夏海たちが近付くと、突然割れ始める。中から出てきたのは、ペンギンのような格好をした生命体だった。
 四人家族とペンギン型宇宙人のひと夏の邂逅を描いたお話です。
 本作は迅本さんが書かれた初長編だそうです。迅本作品のすべてに触れたわけではないけれども、僭越ながら言わせていただくなら、現時点における迅本さんの最高傑作である、と言い切っていいと思う。
 迅本さんが普段から掌編で示されている青春群像・人間愛・それに対比するリアリズム・そして笑いのすべてが、この作品には込められていると思う。そしてそれらが上手に融合し、とても快い「ひと夏の物語」を描き出してくれている。
 迅本さんの素晴らしさは、当たり前にそこにあるものを、魅力的に描いてくれることだ。夏の暑さ。入道雲。夏休みの宿題。片田舎の風景。そういった事物のひとつひとつが、魅力的に、そこにあるように描いてみせてくれる。私たちは読み進むうち、そんなキラキラした夏の世界に飛び出していける。
 ペンギンフェスタの会期に関係なく、ぜひ多くの人に読んで欲しいと思った作品です。お薦め。

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  1. 2013/04/05(金) 00:00:00|
  2. 緑の読書録
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ペンギンフェスタを読もう2012 その2

クールー美人(テキスト部門) / tomoya
 何やってんだtomoyaさん。
 ……ええ、個人的ツッコみはさておき、本作品は地球温暖化とクールビズに関する学生のレポートという形式を採っています。これだけを聞けば、何やら真面目そうなお話だなあ、と思うでしょう。そうでしょう。
 だが読み進むうちに、あなたはその内容のぶっ飛び具合に驚愕するはずだ。そう、これは、真面目な論述の皮をかぶったスラプスティックコメディだったのだ。
 前回も書きましたが、重々しいテーマを笑いに交えて語るというのは、ときに有効な場合があります。その本質からかなりずれてしまったクールビズという運動をある種笑いのめした作品であると思います。
 ですがまあ、そんなことはとりあえず横に置いておいて。とにかく楽しい作品なので、存分に楽しめばいいんじゃないかと思います。

巫女とペンギン(競作部門) / koharu
 koharuさんの新作が読めるのはペンギンフェスタだけ!(※ウェブサイトでも読めます)
 聖なるリュテ河の流れを統べる精霊神は長らく河を守っていたが、近頃気になっていることがあった。ヒトの女が、定期的に自分めがけて投げ込まれるのだ。ある日、投げ込まれた女が巫女だと気付いた精霊神はコンタクトを取ってみたのだが。
 河を守る精霊神と巫女との邂逅をコミカルに描いた作品です。精霊神には精霊神の価値観と判断があり、巫女には巫女の価値観と判断がある。それは当然のように異質なものであり、交わる部分もあれば、交わらない部分もあります。
 登場人物たちに共通しているのが、自らの置かれた状況に様々な諦観を抱きながら、今ある材料の中で何とかしようと物事を考える点です。こういう状況にあるのは仕方がない。その状況の中から何ができるかを探してみよう。そう考えていく筋道を、本作品はコミカルに描写していきます。
 辛い状況にあるときに、どういう心持ちでいるべきか。そんなことを押しつけがましくなく教えてくれる、考えさせてくれる一品であると思います。
 そして何より、面白かった!

  1. 2013/04/04(木) 00:00:00|
  2. 緑の読書録
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ペンギンフェスタを読もう2012 その1

ひも付きロボット 黄金の日々(テキスト部門) / みずきあかね
 一時期流行ったことがあるような気がする、残酷な大人の童話テイストな作品です。
 ペンギンフェスタは企画の性質上、環境や現状に対する問題提起の成される作品が多数投稿されており、それらはどれも素晴らしく、一読の価値のあるものです。ですが、改めて言うまでもなく、そういった問題提起を読者のハートに届けることはなかなかに難しいし、どうしても堅苦しく、敷居の高いものになってしまう。
 紹介するこの二作品は、その敷居をかなーり低くしてくれます。
 重い命題を読者に届けたい、伝えたいと思ったときの武器のひとつが、ユーモアであり、風刺であると私は思います。重いものを重いまま届けることはできないけれども、気軽に読んでもらえるということがまず関心を持ってもらうための橋頭保になる。この二作品は、そんな橋渡しをしてくれる作品です。
 テーマが重そうで敬遠しているという方。まずはこちらの作品から読んでみてください。
 迅本洋さんの花粉病も同系統の作品で、まずはじめに読まれる方にお勧めです。

ペンギンは滅びた人間の夢をみる (競作部門) / 道三
 競作部門から一作。投稿作のすべてをまだ読んではいませんが、現時点で最もユーモアとテーマの融合を体現させている一作であると思われます。
 ペンギンが人類を死滅させた世界。その世界でペンギンのボウは、わずかばかりの飼い主への郷愁とともに生きていた。そう。ボウは、変質する世界の前で飼われペンギンだったのだ。そんなボウの前にある日、奇妙なものを目にした。
 ……というストーリーは二の次でいい。一つ一つのセンテンスに込められたレトリック。ウィット。そしてそれらが合わさって繋ぎあわされたタペストリーにこそ、この作品の本当の顔がある。
 ぜひ多くの人に読んで欲しい。お薦め。
 同競作作品のペンギン High Yeah!も同系統の作品なので、あわせてどうぞ。

  1. 2013/04/03(水) 00:00:00|
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茶林小一

Author:茶林小一
 バカSFからバカSMまでをモットーに、火星人や大和撫子などの絶滅危惧種を保護するため世界緑化運動を推進しています。応援よろしくお願いします。

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